自分が大学生の頃の話。
とある知人とバーで飲んでいた。
高学歴で聡明な彼女とは元々バイト先で知り合った。
彼女は大学卒業後就職していたものの、数年で辞め昔から抱いていた夢を追うためフリーターをしていた。
一方当時の自分はすでに内定をもらっていてかつ卒業を控えている身であった。
しかし、自分にも海外で生活するという小さな夢があった。
そのことを彼女に打ち明けると、彼女は「就職なんてしなくてもいいんじゃない?」と言う。
一理あるのかもしれない。
当時は一度社会に出てから海外に行くのか、もしくはそのまま海外に行ってしまうのかで悩んでいた。
一度日本で定職について経験を得るのが理想的と言えるだろう。
しかしそれだと時間がかかってしまう。
残念ながら就活では海外赴任のある会社には恵まれず、内定先では海外で働くチャンスはない。
自分としては今すぐにでも行きたい気持ちがあった。
そもそもその企業で働くことにあまり乗り気でなかった自分は色々と話しているうちにその気になり、結局自分はそこの会社には行かなかった。
しかしそれからしばらく経って久しぶりにその知人と会うと状況が変わったらしく、話を聞くと彼女はとある企業で働いていた。
色々と心境の変化があったらしい。
その時自分はおめでたいという気持ちと同時に少し切ない気持ちになったことを覚えている。
彼女に影響を受けて就職という道を絶ったのに、気づけば彼女は再就職し至極真っ当な社会人になっていた。
今思えば全ては自らの決断であり自己責任なのだが。
そんなこんなで人の考えというのは時が経てば変わるものである。
前置きが長くなったが、自分も今その変わる瀬戸際にいる。
というのも数年以内には日本に戻ろうかと考えている。
先が見えてしまった
念願の海外生活は最高に楽しかった。
正確には就労ビザを取得するまでは最高に楽しかった。
しかしビザをとってからというもの、似たり寄ったりの同じような日々が続いた。
そもそもドイツというのは娯楽が少ない。
休日にやることといえば、極端に言ってしまえばカフェに行ったり公園を散歩したりするくらいのものである。
都会で生まれ育った自分としては全てがゆったりとしていてスローライフを送っているような気分。
とはいえ、それはそれでありなのかなとも思った。
今後の人生をのんびりと生きていくのもいいと思い込もうとしたが、気づけば東京のような忙しい生活が恋しく思えてきた。
海外で生活するということ自体が刺激的であったが、そんな生活も長くなるにつれて刺激が刺激ではなくなっていった。
現状今の生活に不満はないが、この先自分の人生に起こりうるであろう出来事が見えてしまって、このままずるずると同じ生活を続ける気力が無くなってしまった。
自分だけの人生ではなくなった
パートナーができて自分だけの人生ではなくなった。
この先結婚し、子供を持った場合どうなるであろう。
そう考えるとドイツで生活し続けるというのはあまり現実的ではない気がしてきた。
というのもまず自分はドイツ語があまり話せない。
興味の持てない言語というのはやる気が出ないもので、もうすぐドイツに来て四年経つというのに全く成長していない。
現地の言葉もまともに話せないのにドイツの教育を受ける自分の子供とはどう接すればいいのだろうか。
それにドイツで生まれた場合、自分の子供はドイツ語に加えて英語、自分の母語、パートナーの母語と多言語の環境で育つことになる。
こういった環境もどうなのだろうかと。
一方日本に帰れば両親がいて何かあれば助けを求めることができるし、逆にいずれ必要になるであろう両親の面倒も見ることができる。
自らの老後を考えても日本にいた方が安心である。
幸いパートナーもドイツでの生活には色々と思うところがあるようで、日本に移住することに前向きなので現実味を帯びてきている。
日本でやりたいことができた
新たに挑戦したい目標ができた。
帰国したら起業しようと思っている。
組織に属し一社員として働くというのは自分の中でもう潮時で、次のフェーズに移りたいと感じている。
海外でそれなりに色々と職務経験を積んできた。
そしてそれを活かして自分で起したいという気持ちが芽生えた。
ドイツでやるには外国人であるが故ハードルが高いが、日本でだったらできる。
激務になることは容易に想像がつくし、日本で起業するというのは自分の思い描いていた自由に生きるという人生からかけ離れている気がしないでもないが、自分は常に何かを追い求めて動いていくのが性に合っているんだろうなとこの歳になって気づいた。
最後に
色々と今思っていることをまとめてみた。
いずれにせよ帰国するからといってそんなすぐ簡単に帰れるわけでもなく、まだ一年もしくは二年先の話。
これからも海外出張やもうすぐ切れるビザの更新など色々控えているのでヨーロッパにはしばらくいる予定。
もうすぐドイツを離れると思うと途端にここでの生活が貴重なものに思えてくるのは不思議なものである。