イギリス人にとってこのBritish Humour(ブリティッシュユーモア)は切っても切り離せない存在です。
現地で生活していると特にそれを感じます。
これを知らずに渡英するといくら英語が話せたとしても額面通りに意味を捉えてしまい、勘違いしたまま会話が終えるなんてことも大いにありえます。
なので今回はこのブリティッシュユーモアについて書いていこうと思います。
British Humour(ブリティッシュ・ユーモア)とは
この記事を書いていた時に気づいていたんですが、なんとウィキペディアに説明がありました。なのでまずはそれをちょっと見てみましょう。
ブリティッシュ・ジョーク(British joke)、またはブリティッシュ・ユーモア(British humour)とは、イギリス文化におけるジョーク、ユーモアを指す。権力や権威に反抗的で機知に富み、強い皮肉や自虐的であり、多くの場合は真顔で発せられることが特徴とされる。イギリスのジョークにはダジャレなど言葉を題材にしたネタが多く、コメディアンが大袈裟に転んだりするどたばた喜劇の要素が比較的少ない。更には、言葉を題材としていても、直接的には表現せずにほのめかして表現される傾向があるため、イギリス英語やイギリス文化への理解が少ない場合には、その笑いの要素が理解しがたいことも多い。イギリス文学や演劇文化を通じて培われてきた言葉遊びが元になっている。
Wikipediaより引用
わかりやすいところでアメリカと比較して考えると、「皮肉」や「自虐」そして「真顔」というのはキーワードになると思います。
ブリティッシュユーモアはイギリスだけに存在するものなのか
さて、今回のブリティッシュユーモアですが「じゃあブリティッシュユーモアはイギリスだけに存在するのか」というとそうではないんですね。
ようするに「ブリティッシュユーモア」というラベルが貼ってあるだけであり、他の国にも存在します。
特に日本なんかはお笑いの文化が発達しているので(自分が日本人であるというバイアスがかかっているというのも否定できないが)今回紹介するブリティッシュユーモアと被っている点がかなりあります。
「ブリティッシュユーモア=コメディ」ではない
また、ブリティッシュユーモアをコメディと考えてしまうとそれは少し違うかもしれません。
もちろんコメディにもこれから紹介するユーモアの要素が含まれるんですが、じゃあなぜイギリス特有のものでもないこのブリティッシュユーモアが有名かというと、それは文化レベルで深く根付いているからなんですね。
ようするにこのユーモアはコメディだけにみられるものではなく、国民が日常生活において頻繁に用いるからなんです。
なのでこのユーモアが「ブリティッシュユーモア」として知られているというわけです。
ではさっそくこのブリティッシュユーモアについてみていきましょう。
British Humourの要素
Irony(アイロニー)
アイロニーは「皮肉」のことです。
本来意図する意味と異なっていたり、反対の意味を強調する場合に用いられます。
大雨の日にあえて天気を褒めたりするのなんかは定番ですね。
Sarcasm(サーカズム)
サーカズムはアイロニーの中でも「(その対象が誰かしらの「人」に向けられ)嘲ったり、嘲笑ったりする」ことを指します。
なにか自分の行為などに対して褒められたりしても、それはもしかしたらサーカスティックな意味合いで言われてるかもしれません。
先ほどのアイロニーもそうですが、その場合はこっちもそのノリにのって返事ができると良いですね。(その時の返答によってちゃんと理解できているかどうかが相手に伝わってしまいます)
ただ日本人の場合は「空気を読む」という特殊能力を持っているので気づける人も結構多いかと思います。
Deadpan(デッドパン)
Dry humour(ドライユーモア)とも言います。
デッドパンは「真顔(無表情)で、かつ真剣な口調で言う(ことで皮肉な意味になったり可笑しくなる)」ことをいいます。
Stewart Francis(スチュワート・フランシス)なんか参考になるかもしれません。
スチュワートフランシス自身はカナダ人のコメディアンなんですが、イギリスで活躍していてMichael McIntyre(マイケル・マッキンタイア)と共にイギリス国内を回るコメディショーに参加していたりします。
one-linersとは短いセンテンスのジョークのことです。
Wit(ウィット)
ウィットはWitty(ウィティ)とも言います。
ネットフリックスのなどでよく「ウィットに富む」、「ウィットに富んだ映画」という表現を見ますね。
ウィットとは機知や理解力、知力などの意味があり、British Humourにおけるウィットとは一般に「すばやく知的な発言やコメントを(多くは真顔で)言う」ことをいいます。
なにかしらの相手の発言に対して、即座にスマートな返しをするといったニュアンスが強いですかね。「即座に」というのがポイントです。
参考になるものだとジミー・カーのこの動画とか。
heckleとは「野次」のことです。
ジミーカーのスタンダップコメディではこうした観客から野次を飛ばしてもらい、それに対してジミーが巧みに返すというコーナーのようなものがあります。
すべてがすべてウィットというわけではないんですが、ジミーのこの即座にスマートに返す能力はすごいです。
Banter(バンター)
バンターは「遊び心のあるからかい」といった感じですかね。
あくまで冗談なのですが、時に辛辣なものになるので主に親しい友人や家族間で使われます。
とはいっても冗談の域を超えて度が過ぎてしまったり、そもそもこういった類のものは人によって苦手な方も多いのでバンターといじめは密接な関係にあるとも考えられます。
Self-deprecation(セルフ・デプリケーテョン)
セルフデプリケーテョンは「自分をからかう」ことをいいます。
日本でいうところの「自虐ネタ」ですね。
これに関してはアメリカ人とイギリス人を対比したわかりやすいものがあるのでそれを紹介します。
Americans might say “America is the greatest”.
Brits might say “Britain is a great place to visit if you don’t mind poor weather and questionable food”.
文章の内容自体はまさしくテンプレのようなよく聞くものですが、セルフデプリケーテョンを理解する上ではわかりやすい例だと思います。
Innuendo(イニュエンドウ)
Innuendoはクイーンの曲でもありますね。
イニュエンドウは「タブーもしくは性的な意味とも取れるような可能性のある発言を意図的に言う」ことをいいます。
本来の意味にはタブーや性的なものは含まれていないんですが、案にそういったものと感じさせるように言ったりします。
際どいものをここに貼るのはあれなので、ソフトなものを貼っておきます。(アメリカ人カップルが登場するところが面白いです)
セクシャルな意味で使われるのだと、食べ物そのものや食べる行為なんかを言ったりするのは定番ですよね。
ちなみにアメリカのイニュエンドウといえば、“That’s what she said” なんかが有名ですね。
Puns(パンズ)
punは「駄洒落」のことです。punning(パニング)ともいいます。
パンズは言葉をちょっと変えたりした文字遊びといった意味合いです。
例としては「Bread Pitt」というパン屋や、「Thai tanic」というタイ料理レストランなど。
これ本当に多くてロンドンで生活していると店の名前や電車内の広告など至るところで見かけます。
他にもIron Maiden、Jack the stripper、Sure lock Homes、Beauty and the beach、The Codfatherなどたくさんあります。(元ネタ、そしてなんの店だかわかりましたか?)
これは店名などだけではなく、会話でも用いられることがあります。
例えば例として、今自分はイギリスのドラマ『The Thick of It』という英国政府内部を舞台とした政治コメディを見ているんですがここでこんな台詞が登場します。
“Are you an Ameri-can or an Ameri-can’t, Peter?”
こんな様子でいろいろな場面でパンズは使われます。
パンズに関してはこんな記事も書きました。
最後に
ということで今回はブリティッシュユーモアについてまとめてみました。
ユーモアの要素自体は別に日本でもみられるものですが、他の国と比べてイギリスではこういったユーモアが文化レベルで深く根付いていて日常生活で繰り広げられます。
英会話が苦手な人でもアイロニーやサーカズムを知っていればそれだけで会話を理解する上での一つの助けになるし、さらに自分が使えるようになったらより英会話は楽しいものになると思います。
以上で紹介した要素からもわかるようにブリティッシュユーモアは日本のユーモアにも共通している部分が非常に多いので、日本人のほうが他の国の人たちよりもイギリスのスタンダップコメディやシットコムなどが理解できるし楽しめると思います。
今回はひとまとめにざっくりと概要を紹介したので説明不足な点も多いかと思いますが、いずれそれぞれに注目して書くかもしれません。