以前こんな記事を書きました。
この記事で取り上げた動画 “Cosmic Queries” 。
これは天体物理学者ニール・ドグラース・タイソンとスタンダップコメディアンのラッセル・ピーターズの対談で、以前書いた記事では触れなかったんですが個人的に気になった話がありました。
それが今タイトルとなっている、どの時代の人々も皆「自分たちはすごい時代に生まれた」と思っている、という話。
これに対し「だからなに?」と言われてしまったらそこまでなんですが。
個人的にはなかなか興味深い話だなと感じたので今回取り上げてみます。
すごい時代に生まれた?
とはいいつつも、今私たちの時代は飛躍的に技術が進歩しており、その変化のスピードは日に日に早くなっていっています。
例えば200年前、300年前、もっと昔でもいいですがそこと比べたら今はもう別世界ですよね。
過去をこうして振り返るとあなたはこう感じるはずです。「良い時代に生まれたな」と。
ところがこれ、今の私たちだけが感じているものではなく常に人類が感じてきていることなんです。
ざっくりいいますが、1800年代に生きていた人たちは1500年代の話を聞いてそう感じるし、1500年代に生きていた人たちは1200年代の話を聞いて同じことを感じてきたんです。
もちろん今もすごい時代です。例えば世界中だれとでも連絡を取り合うことができるなんて昔では考えられなかったことです。
もっと最近の話をするならイーロン・マスクの新事業「ニューラリンク」が世間を賑わせてますね。もう人間そのものが高次元の存在へと進化の道を歩んでいるように感じます。
しかしこれはもっと未来の人たちからしたらなんでもないことで、結局今私たちが数百年前の時代に感じる感覚と同じなんです。
と、いったような話がニールドグラースタイソンが動画内で話している内容ですが。
それでもやっぱり、「とはいいつつも…」って思いません?
なのでこの話をもう少し違う観点から深堀りしてみていきましょう。
人類の歴史はまだ浅い?
「浅い」というのは何と比較するのかによって変わってくるんですが、仮に宇宙の歴史と比べたとしたら「浅い」どころかそもそもスタートラインに立てているのかもわかりません。
ここでは理論物理学者ブライアン・グリーンの話をします。
実は私たちの住む宇宙には寿命があると考えられています。それが10の100乗年です。
ブライアングリーンはこれをわかりやすくEmpire State Building(エンパイア・ステート・ビルディング)に例えて人類の歴史と比較し解説したものがあるのでそれを紹介します。
エンパイア・ステートビルはマンハッタンのビジネス街および観光の中心地であるミッドタウンエリアにそびえ立つ高さ443m、地上102階建ての超高層ビルで、これまで1億人以上が訪問したニューヨークを代表する観光名所です。
地上(0階)が1年で、そこから一階ずつ上がる度に10倍の年月を要します。(1階が10年、2階が100年と「×10」していく)
このビルは約100階まであるので最上階が宇宙の終わりということです。(10の100乗年)
この例えでいくと、0階(ビッグバン)から始まり、現在私たちがいるのは10階になります。(10の10乗で100億年。厳密に言えば138億年)
こう聞くと宇宙の終焉はまだまだ先のようですが、ブライアングリーンがいうにはその前に陽子崩壊する可能性があるといいます。(あくまで仮説)
それがなんと38階です。
なので私たちがこれからこの宇宙で生きることのできる期間は「10階から38階まで」となります。それでもかなり長いですね。
しかしこれは冒頭でも述べたように、結局のところこれは何と比べるかによって変わってきます。
“10 to the 38 years is like less than a blink of an eye. I mean it’s nothing on those scale.”
宇宙の寿命と比べてしまったらこの私たちの生きる期間なんて瞬きよりも短いぐらいの感覚なんですよね。なので当然これまでの人類の歴史なんかはそれよりももっともっと短いものとなります。
(ちなみにこの話をしている動画はこちらで紹介しています)
人間は地球上で最も成功したものではない?
続いて天体物理学者のジャナ・レヴィンの話をします。
今現在地球上に住むものの中でその主役といえば「人間」ですが、昔は違いました。
それが「恐竜」です。
“I don’t think we look like the most successful species that’s ever walked the face of the earth. I mean dinosaurs were here for hundreds of billions of years.”
地球の歴史は46億年といわれています。
そして現生人類である新人が登場したのが約20万年前から10万年前とされているので人類の歴史はざっくり20万年くらいですかね。
それに引き換え、恐竜は約1億6000年もの間この地球上に君臨していました。もう人間とは非にならないくらいの期間です。
一説には人間含め現存する全ての生物の9割は20万年前から10万年前に突然現れたなんて話もあるのでこれからどうなるかはまだわからないですね。
地球の歴史からみても人類の歴史は非常に短いものなので、未来では他の生物が地球を牛耳っているかもしれません。(こんなトピックだけに“Life finds a way.” であってほしいところですね。)
人類はまだタイプ1文明にも達していない?
最後に物理学者のミチオ・カク氏の話をします。
彼はKardashev scale(カルダシェフ・スケール)という宇宙文明の発展度を示す三段階のスケールを用いて説明します。
タイプI文明は、惑星文明とも呼ばれ、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御できる。
タイプII文明は、恒星文明とも呼ばれ、恒星系の規模でエネルギーを使用および制御できる。
タイプIII文明は、銀河文明とも呼ばれ、銀河全体の規模でエネルギーを制御できる。
Wikipediaより引用
“Now on this scale, we are type zero. We get our energy from dead plants, oil and coal. We don’t even rate on this scale.”
現在の技術は目まぐるしく進歩していますが、「このスケールだと私たちはまだタイプ1文明にもなれていない」とミチオ・カク氏は言います。
Sci-fiみたいな話になってしまいますが、もしかしたら未来では私たちは高次元の存在になっていて、彼らからしたら私たちは私たちでいうところの原始人レベルかもしれません。
“But if we can make it to the next 100 years here we can make through it, we will become a type one civilization truly planetary. And that’ll be the greatest transition in the history of the human race. From segmented nations that fight each other with fundamentalist ideologies to a planetary civilization that is secular scientific multicultural and at peace. If we can make it through the next hundred years then we can make it to type one.”
(先ほどの「恐竜の話」もそうなんですが、この文章はスティーヴンホーキング博士の人類への警告「数百年後地球に危機が訪れる」というトピックのなかで発言されたものです。なので文章内で述べている “make it through” とはその事柄を指しています。)
もし本当に今後100年でタイプ1文明になり、調和の取れた存在となったらそれは人類にとって大きな転換点となりますね。
ちなみに先ほどのジャナレヴィンとミチオカク氏の話をしている動画はこちらで紹介しています。
最後に
序盤と後半でだいぶ話が飛躍してしまいました。でもこういった話って面白いですよね。
今後どうなるのかはわかりませんが、これだけ一人一人の生きる時間が短いとそこに実体があるのかもよくわからなくなってきますよね。
こういった話を聞いていると「世界五分前仮説」みたいなのを信じる人が出てくるのもちょっとわかる気がします。