Audibleの朗読で19世紀末英国ロンドンの世界へ【英語でシャーロックホームズ】

映画『インサイドマン』で学べること【アメリカの多様な文化 / 英語】

今回はスパイク・リー監督の映画『Inside Man(インサイドマン)』について。

スパイクリーといえば『Do the right thing(ドゥ・ザ・ライト・シング)』、『マルコムX』など、主にアメリカの人種問題などを取り扱った社会派映画が多いです。

スパイクリー作品は学生時代にはまりほぼ全部見ていて、どれも面白いのでおすすめです。

本作『インサイドマン』ではデンゼルワシントン、クライヴオーウェン、ジョディフォスターと非常に豪華な役者陣をむかえています。海外ドラマ『ロスト』ファンとしてはケン・レオンが出ているのも見逃せないですね。

当ブログでは主に「英語」にフォーカスを当て、当方が好き勝手書いていくので映画評論ブログとは違った内容が多くなると思いますが、そういった部分も楽しんでいただけたら幸いです。(映画解説に関しては他の方が素晴らしい記事を書いているのでそちらをご覧ください。)

本作を通じて学べること

『インサイドマン』はまず冒頭のクライヴオーウェン演じるダルトン・ラッセルの”My name is Dalton Russell. Pay strict attension to what I say…”から始まる語りが非常に印象的です。

クライヴ・オーウェンかっこよすぎる…

まだ学生だった当時、このシーンを見たときはあまりにもかっこよすぎて、すぐに暗記しました。いまでもこの台詞は全文暗唱できます。

ちなみにクライブオーウェンはイギリスの俳優です。

日本人である自分からしたらそこまで違和感を感じないんですが、この映画での彼のアメリカンアクセントはあまり評価されていないようです。(あるメディアでは”クライブオーウェンがアメリカンアクセントで話しているというより、アメリカ人がクライブオーウェンのモノマネをしているように聞こえる”と評した)

日本語字幕だと「ハムレット」と出てきますが、英語では「the Bard」と言っています。

… And therein, as the Bard would tell us, …

Bard とは詩人のことをいうんですが、the Bard と、theがつくと一般にシェイクスピアのことを指します。日本でもある業界の中で特別な人、また物というニュアンスを伝えたい時に「ザ・ほにゃらら」と言いますよね。それと同じ感じ。

“therein lies the rub”(正しくは”there’s the rub”)(そこが問題だ)」はシェイクスピアのハムレットで出てくる台詞です。

あと冒頭、そしてエンディングにも流れるあの印象的な曲。あれはあのインドのスーパースター、シャー・ルク・カーン主演のボリウッド映画『Dil Se』で使われている曲『Chaiyya Chaiyya』が元ネタです。

この映画も面白いのでおすすめ

なかでもエンディングで流れる『Chaiyya Chaiyya』にはラップが加わっていて、これがまたかっこいいんですよね。(すでにあるものにラップをのっけるヒップホップ的要素を映画に取り込んでいるところがまた「アメリカの黒人カルチャー」を象徴していて良い)

この歌は有名なのでインドの人なら大体知っていると思います。(インドに行った時にこの歌知っていると言ったら現地の人たちと仲良くなれるかも。自分はバラナシとかで現地の人とこの歌を歌ったりしました。笑)

ここでボリウッドについて語り始めてしまうと長くなるのでこのへんで。

映画の序盤、銀行の近くを巡回していた人が異変に気づきましたが、中からマスクにサングラスの男(ラッセル)が現れ、銃口を向けられる場面があります。

ラッセルは英語ネイティブですが、あえてここで訛りをいれた英語を話していて警察を欺こうとしています。(字幕でもカタコト風にしている)

次にオフィスにて、フレイジャーと上司のやりとり。

Boss: Grossman’s on vacation. You’re up.

F: What about the Madrugada check-cashing thing? I thought I was in the doghouse.

Boss: I just throw you a bone. As far as I’m concerned…

太文字の箇所にご注目ください。

この部分は日本語字幕で見ていると「こんなやりとりあったっけ?」って思いますよね。(グロスマンという人物は本来この事件の担当をする予定だった人で、Madrugada check-cashing thingは小切手事件のことです。)

日本語字幕だとわからないんですが、実はあのやりとりの中で上司の人は上手い返しをしているんです。

in the doghouseは直訳すると「犬小屋のなか」ですが、「自分がした、もしくはしなかったことに対して誰かが怒っている状況」のことを言います。(映画ではフレイジャーが例の小切手事件で干されているのでその状況のことを指しています。)

こんなフレイジャーの状況を鑑みて、ボス(名前わからん)はフレイジャーに骨を投げる(throw you a bone)ことによって直訳の意味での「犬小屋」から出してやるよ(干されている状況から挽回しろよ)と言ってるんですね。

宗教

序盤のほうで解放された人質の中にはビクラムと名乗るシク教徒の方がいました。

シク教は、16世紀にグル・ナーナクがインドで始めた宗教。スィク教、スィック教、あるいはシーク教とも呼ぶ。シク(スィク)はサンスクリット語の「シシュヤ」に由来する語で、弟子を意味する。それにより教徒達はグル・ナーナクの弟子であることを表明している(グルとは導師または聖者という意味である)。

Wikipediaより引用

目隠しを取って彼の顔を見たとき、警察は異常に警戒します。(この場では書かないですが、ひどいこと言ってます)

彼らはビクラムの外見だけで勝手に「やばいやつ」だと決めつけています。

のちにフレイジャーらとの質疑応答でビクラムはこの対応に不満をもらします。

Not an Arab, by the way, like your cops called me.

ダリウスも適当に理由をつけてごまかしますが、正直その場限りのものにしか聞こえません。

ビクラムの必死の説明もむなしく、結局誰も理解しようとはしていません。

ビクラムはその後も空港などで不当な扱いを受けていることについて言及します。その後のフレイジャーのやりとり。

F: I bet you can get a cab, though.

V: I guess that’s one of the perks.

perk はいろんな意味がありますが、ここでの意味は「特典」ですかね。

大都市ニューヨークではタクシー運転手は移民の方が多いので、「(お前と同じアジア系が多いから)タクシーはちゃんとつかまえられるだろ」っていうことですね。

この台詞は白人のダリウスではなく、黒人のフレイジャーが言っているのでジョークとして成り立つと思います。

待遇が変わる場面こそ違えど、マイノリティー同士なのでお互い共感できる部分も多いはずです。(日本人でも海外に住めばそこではマイノリティーなので、自然とアジア人同士で仲間意識が芽生えたりします)

少年

ゲームをしていた少年は50Centの言葉を引用していましたね。

Like my man 50 says, “Get rich or die trying.”

ヒップホップ聞く人なら説明不要ですが、50Centはニューヨーククイーンズ出身のラッパーです。

当時のヒップホップではギャングスタラップというスタイルが流行っていて、50Centもそのうちの一人でした。『In da club』とかは一度は聞いたことある人も多いんじゃないですかね。(the を da にしてるところが時代を感じる)

今ではドラマ『POWER』など監督業で活躍していますね。

少年が引用したGet Rich or Die Tryin’ というフレーズは50Centの1stアルバムのタイトル、そして映画『Get Rich or Die Tryin’』のタイトルにも使われています。(この映画なつかしいなー)

当時のイメージのままだと誤解してしまいそうですが、50 Cent Goes Sneaker Shopping with Complexとかをみると、50はスマートな印象を受けます。

「大人としての対応をするラッセル」と「すでに一丁前の黒人的スラングを使う少年」の親子のような二人のやり取りに思わずにやっとされられてしまいます。

R: Is it good?

Boy: No doubt.

R: It’s gonna be okay.

Boy: Cool.

R: You’ll be home soon.

Boy: That’s what’s up.

人種

フレイジャーらはその後、ピザに盗聴器をしかけますがそこから聞こえてきていたのは元アルバニア首相の演説でした。

アルバニア、アルバニア人に関しては人質らとの尋問でも登場します。

F: Is that Albanian or…

Guy: It’s Armenian.

F: What’s the difference?

違いがわからないのは仕方ないことですが、それを本人に直接「なにが違うの?」と聞くのは少し失礼なんじゃないかなと感じます。

確かにアルバニアとアルメニアは名称が似ているし区別がつかない人もいるので、ここでは単にそれを言いたかっただけなのかもしれません。(彼らにとっては共感できる、あるあるネタなのかも)

アルバニアとアルメニアは名前こそ似ていますが、全く異なる国です。

アルバニアはバルカン半島にあるヨーロッパの国で、一方アルメニアはコーカサス山岳地帯にあるアジアの国です。(ヨーロッパとアジアのはざまに位置するのでヨーロッパに分類される場合もあります)

ちなみに本作で唯一俳優のケン・レオンだけが黄色人種ですが、映画の冒頭で電話している女性を凝視して嫌がられます。深い意味はないかもしれませんが、この躊躇なく相手を真顔で凝視してくるっていうのもアジア人のイメージなんですかね。

最後に

ということで『インサイドマン』に関していろいろと書いてみました。

冒頭にも述べましたが、映画の本筋、内容については他の方がわかりやすい解説をされています。

スパイクリー作品は本当にいろいろと考えさせられる(ついつい深読みもしてしまう)映画が多いですね。

ほかにも好きな作品がたくさんあるので、また紹介できたらなと思います。