今回はデヴィッド・フィンチャー監督の映画『The Social Network(ソーシャル・ネットワーク)』について。
デヴィッドフィンチャーといえば『セブン』をはじめとして、『ゲーム』、『ファイトクラブ』、『パニックルーム』、『ゴーン・ガール』などたくさんの名作を世に生み出しています。“I seen The Fight Club about 28 times”
ドラマでも『ハウスオブカード』や『マインドハンター』なんかを手がけていますね。
デヴィッドフィンチャー作品は内容もさることながら、とにかく映像が美しいので(ソーシャルネットワークではそこまで気にならないけど)、ほとんどの作品を見てます。
個人的にダークなトーンのある映像が好きなので、どの作品も見入ってしまいます。(室内のシーンとかで「ライティング暗すぎじゃない!?っていうくらい暗いとことか好き」)
映画『ソーシャルネットワーク』では、ジェシー・アイゼンバーグ演じるマーク・ザッカーバーグとアンドリュー・ガーフィールド演じるエドゥアルド・サベリンのフェイスブック創設から訴訟問題にまで発展する話が描かれています。
それではみていきましょう。
アメリカの文化と英語表現
「Rowing」は人気のスポーツ
正直日本ではあまり馴染みないですよね。
アメリカの大学ではイメージとしてバスケやフットボールが人気のイメージですが、ボート競技(レガッタ)も人気のスポーツとなります。
なぜ鍛えているのか?というマークの問いかけに対し、ウィンクルボス兄弟が発した “We row crew.” という一言はもはやパワーワードです。
映画内で出場する大会は実在するもので「Henley Royal Regatta(ヘンリー・ロイヤル・レガッタ)」といい、ロンドンから西へ約50キロ離れたオックスフォードシャーにあるテムズ川沿いの町ヘンリーオンテムズで行われています。
映画に出てくる数々の名門大学
マークらは最初フェイスブックを学生間で広げていくのでいろんな大学名が登場しますね。
ルーニー・マーラ演じるエリカはボストン大学(BU)の学生です。
ボストン大学はアメリカでも有数の私立大学で、ジュリアンムーアやハワードスターン、江南スタイルでお馴染みのPSYなんかも卒業生です。彼が英語を流暢に話せるのは意外と知られてないんじゃないでしょうか。(Oxford Unionの動画がおすすめ)
マークらは最初ボストン大学と共にイェール、コロンビア、そしてスタンフォードに広げていこうと画策します。
イェール大学とコロンビア大学はアイビーリーグを構成するうちの2校です。
アイビー・リーグ(英: Ivy League)とは 、アメリカ合衆国北東部にある8つの私立大学の総称。またこれらの大学で構成するカレッジスポーツ連盟の名称としても用いられる。構成大学はブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学。
Wikipediaより引用
一方スタンフォード大学はカリフォルニア州スタンフォードに本部を置く私立大学です。
西海岸、カリフォルニアにある名門大学で有名なところだと、スタンフォードやUSC、UCLAとかですかね。
コロンビア大学とUCLAはキャンパスを見に行ったことがあるんですが、やっぱりアメリカの大学はとにかく広いですよね。特にUCLAはキャンパスも駐車場も広すぎて勝手がわからず、駐禁とられた経験があります。(ださ)
ちなみにハーバード大学での印象に残るシーンといえば、やはりあのパーティですよね。
リムジンでたくさんの美女たちがハーバード寮にやってきて派手に遊ぶというあのシーン。あんなことが本当に行われているのでしょうか。
以前なにかでコナン・オブライエンがこのことについて質問されたのをたまたま聞いたんですが(彼はハーバード卒)、彼が言うにはこんなことは見たことも聞いたこともないと回答していました。
そもそも時代が違うのでなんともいえないですが、やっぱり映画で描かれただけの世界なんですかね。
ユダヤ系アメリカ人
映画では「The Jewish fraternity」のシーンがありました。JewishもしくはJewsはユダヤ人やユダヤ系の方々のことをいいます。
マークザッカーバーグ、そして彼を演じるジェシー・アイゼンバーグもユダヤ系アメリカ人で、エドゥアルドを演じるアンドリュー・ガーフィールドも父親はユダヤ系アメリカ人です。
アメリカは様々なルーツを持った人たちがいる多民族国家なのでユダヤ系アメリカ人もそのうちのひとつで、アメリカの文化に深く関わっています。
ユダヤ系アメリカ人はスティーブンスピルバーグや、コーエン兄弟、ハリソンフォード、ショーンペン、ナタリーポートマン、リックルービン、ボブディランなどあげていったらきりがありません。
ユダヤ関連でいうと、アメリカの映画や海外ドラマではバル・ミツワー(もしくはバルミツバ)の場面をよく見ます。
バルミツバとは「ユダヤ教における成人式」のことです。
訴訟にまつわる英語
“I’m currently in the middle of two different lawsuits.”
マークザッカーバーグはウィンクルボス兄弟からはアイデアを盗用したとして、元CFOエドゥアルドからはストックの取り分を巡り、なんとダブルで訴えられてしまいました。さすがは訴訟大国アメリカですね。
映画や海外ドラマでもこういった訴訟、裁判を題材にしたものや、関係なくても場面として多々出てくることが多いので、覚えておいて損はないでしょう。
訴訟は lawsuit といい、訴える、告訴するという動詞は sue です。
こういった映画やドラマなどでは、「bar」もよく聞くんじゃないでしょうか。
barはお酒を提供する「バー」の意味がありますが、「法廷」という意味もあります。なのでbar examというと司法試験のことを指し、passed the barで司法試験に合格したという意味になるのはこういった理由からです。
本編とはあまり関係ないですが、ウィンクルボス兄弟が最初に電話をかけた弁護士は「ホチキス」という名前でした。
“Mr. Hotchkiss? Ty, lawyer’s on the phone with Dad.”
日本でホチキスとして浸透しているものは英語ではstapler(ステープラー)といいます。日本にはホチキス氏が立ち上げたホチキス社のステープラーが最初に来たので日本では「ホチキス」として定着しました。
ちなみに今住んでいるイギリスでは掃除機のことを一般にhoover(フーバー、フーヴァー)と呼びますが、これも同じでフーバー社からきています。(イギリスではどのメーカーのものでもフーバーと呼ぶことが多いです)
映画で登場する用語
- plaintiff 原告
- defendant 被告
- deposition 宣誓供述書
- under oath 誓約のもとに(真実を述べる)
- perjure 偽証の罪
- testimony 証言
- legal obligation 法的債務
- cease-and-desist letter (行政機関からの)停止命令
- settle / settlement 和解する、和解
- nondisclosure agreement 秘密保持契約
- jury 陪審員
ショーンパーカーとのシーン
ジャスティンティンバーレイク演じるショーンパーカーはすごいカリスマ的に描かれていましたね。彼の展開する話はヴィクトリアズ・シークレットの話など興味深いものが多かったですが、その語り口も面白かったです。
個人的に好きだったのはマークらとショーンが初めて会い、会食する場面でのエドゥアルドとショーンのやりとり。
E: Sorry, you didn’t bring down the record companies. They won.
S: In court.
E: Yeah.
S: You wanna buy a Tower Records, Eduardo?
それ以外の英語まとめ
- Meteorology 気象学
- a sense of humor ユーモアがある
- exclusivity 排他性
- resented 憤慨する、腹をたてる
- skeptical 懐疑的な
- in dispute 論争中の
- adequately 適切に、十分に
- stipulate 規定する、明記する
- jeopardize 危険にさらす、危うくする
- tremendous(大きさ、量などが)とてつもなく大きい、多い
そういえば、以前こんな記事を書きました。
本などとは違い、映画では字幕の文字数が決まっているので日本語訳は基本的に簡潔なものになります。
例えば序盤も序盤、EricaとMarkがバーで飲んでいるシーンで、中国とアメリカの学生の学力を比較している場面があります。
M: How do you distinguish yourself in a population of people who all got 1600 on their SATs?
E: I didn’t know they take SATs in China.
M: They don’t.
しかしエリカの発言は日本語字幕では「中国にも試験が?」と中国に学力試験がないかのような訳になっていて、字幕だけを追っかけていると彼らの会話はいささか頓珍漢なものに聞こえます。(そもそもこのシーンでのマークとエリカは会話自体が噛み合ってないので、そのうえで日本語字幕をつけるのはもう至難の技となっています。)
SATとはアメリカの大学に入学するために受ける試験のことで、日本でいうならセンター試験のようなものです。
ほかにも例えば、最後ショーンがエドゥアルドを追い返したあとの場面。
M: You were kind of rough on him.
S: That’s life in the NFL.
しかし日本語字幕では「やりすぎだ」「競争社会さ」と訳されています。
ユーモアに富んだショーンの返答ですが、字幕でみるとあっさりした印象を受けますね。このように大体多くの固有名詞は省略されることが多いです。
違うケースだと、終盤に新人の女性弁護士がマークにアドバイスする場面。
“Pay them. In the scheme of things…It’s a speeding ticket.“
字幕では「和解金を払って。今のあなたには大した額じゃない」となっています。
(お金に余裕のある今のあなたにとってはスピード違反でのチケット程度の安いものなんだから)大した額じゃない、ということですね。
ということで英語でそのまま映画が見られると、より表現豊かな映画になるものがたくさんあります。(特にネットフリックスなんかは”簡潔”な字幕になってます)
音楽を手がけるのはトレント・レズナー&アッティカス・ロス
Trent Reznor(トレントレズナー)といえば、Nine Inch Nails(ナインインチネイルズ)ですね! How to Destroy the Angelsも大好きです。(ここを語りだすと止まらないし脱線してしまうので控えます)
トレントレズナー&アッティカスロスが作るサウンドトラックは本当に素晴らしいですね。簡単に紹介すると『Gone Girl(ゴーンガール)』や『Patriots Day(パトリオットデイ)』などいろんな映画音楽を手がけています。
トレントレズナーの作る音楽には彼特有の音、メロディがあります。なので長年聞いているファンからすると、映画を見ているだけで「これトレントレズナーじゃね?」とわかります。(NINファンなら共感してもらえるはず)
実際、映画『Bofore the Blood』なんかはある日、予備知識ない状態で見ていたんですが、映画の冒頭ですぐにサウンドトラックがトレントレズナーによるものだとわかりました。
エンディングではビートルズの『Baby, you’re rich man』が使われていますね。これに関してはそのままで、特に深い意味はなさそうです。