ネットフリックスってどこの国でも見れると思うんですけど、配信してるコンテンツは国ごとに若干異なっている場合が多くて。
イギリスにいた時は日本のものもありつつも(ジブリとかね)、やはりイギリスの映画や海外ドラマがかなり多く、しかも他の国ではおそらく配信されていないであろうものもあったりなんかして(例えば『The Thick of It』とか)なかなか面白いんですよね。
今はあれですけど旅行なんかで他の国を訪れた際にはついでにネットフリックスもチェックしてみると意外な掘り出し物があったりするかも。
で、私はいまドイツにいるわけですが、早速チェックしてみるとドイツ映画やドラマがたくさんあるようです。
映画に関しては本題と逸れるので多くは拾いませんが、有名どころの『Das Leben der Anderen(The Lives of Others / 善き人のためのソナタ)』とか『Vier Minuten(Four Minutes / 4分間のピアニスト)』などはネットフリックスにありますね。
ドラマに関しては正直ドイツのものを観るのって今回初かも。
フラットメイトにおすすめされたものだと『Weissensee(ヴァイセンゼー)』や『Der Tatortreiniger(Crime Scene Cleaner)』が面白いらしい。
ちなみにフラットメイトとは以前に映画を観に行きました。
まぁ話を元に戻しまして、人生初となるドイツドラマ『DARK / ダーク』を観てみることに。
ちなみに『ダーク』はNetflixオリジナルなのでどこの国でも視聴できるはず。イギリスにいる頃から「面白そうなのがあるな〜」と気になっていました。
まだ観られていない方はネタバレになるのでご注意を。
SFスリラー『DARK / ダーク』
『ダーク』はドイツの田舎町で起きた子どもの失踪事件をきっかけに、4つの家族の秘密が暴かれていくSFスリラー、ミステリードラマ。
一見「ホラーなのかな?」みたいな印象を受けるトレイラーですが、そういった要素はありません。(自分はホラー苦手なんですが、ホラーだと勘違いしてしばらく手をつけていませんでした)
このドラマを観ている方でかつ、このブログを観られている方(そんな人いるのかわからないけど)ならわかると思いますが、個人的にはたまらない内容でした。
「時間」と「パラレルワールド」
シーズン1では「現在と過去」、シーズン2では「現在と過去、さらに未来」、シーズン3でついには「平行して存在する別の世界」とかなりぶっとんだ内容となっています。
多くのキャラクターがここまで頻繁にタイムトラベルし、過去や現在を行ったり来たりする作品というのはなかなかないんじゃないでしょうか。
登場人物が多い上にそれぞれに子供、大人、老年のキャラが登場するので最初は誰が誰なのか収拾がつかなくなって苦労しました。
逆に言えば登場する誰しもが何かしらのキーパーソンであったりするので面白かったり。(これも珍しい気がする)
とにかく、このドラマにおいて「時間」というのは大きなキーワードだと思います。
過去は変えられない?
息子を殺されたと思ったウルリッヒが過去に遡り、犯人と思われるヘルゲ(この時はまだ少年)を殺害しようとするシーンがあります。
しかしこれは失敗に終わりました。
すでに大人のヘルゲが存在している時点でその流れは不可避であり、少年時代のヘルゲを殺害することは許されません。
これとはちょっと異なりますが、「親殺しのパラドックス」というものがあります。
親殺しのパラドックス(おやごろしのパラドックス)は、タイムトラベルにまつわるパラドックスで、SF作家ルネ・バルジャベルが1943年の著作 Le Voyageur Imprudent(軽はずみな旅行者)で最初に(この正確な形式で)描いた。
英語では grandfather paradox(祖父のパラドックス)と呼ぶ。
すなわち、「ある人が時間を遡って、血の繋がった祖父を祖母に出会う前に殺してしまったらどうなるか」というものである。
その場合、その時間旅行者の両親のどちらかが生まれてこないことになり、結果として本人も生まれてこないことになる。
従って、存在しない者が時間を遡る旅行もできないことになり、祖父を殺すこともできないから祖父は死なずに祖母と出会う。
すると、やはり彼はタイムトラベルをして祖父を殺す……。
このように堂々巡りになるという論理的パラドックスである。
Wikipediaより引用
デジャブ
このドラマではデジャブもよく出てきますね。
ドラマの冒頭ではこんなやりとりも。
“Something up?”
“I think I’m having déjà vu. The light, the forest. As if all of this has already happened before.”
“A glitch in the matrix.”
“What?”
“If the world is a simulation, déjà vu is a glitch in the matrix.”
“Or a message from the other side. I read that somewhere.”
こんな会話してみたい。
simulationというのは「シミュレーション仮説」のこと。
この世界は仮想現実かもしれないというものです。まさに映画『マトリックス』みたいな。(トリニティがネオにデジャブという現象は “A glitch in the matrix” である、と説明する場面がありましたね)
a message from the other sideというのはパラレルワールドのこと。
パラレルワールド(parallel world)とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。
並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われている。
そして、「異世界(異界)」、「魔界」、「四次元世界」などとは違い、パラレルワールドは我々の宇宙と同一の次元を持つ。
SFの世界の中だけに存在するのではなく、理論物理学の世界でもその存在の可能性について語られている。
Wikipediaより引用
私たちと平行して存在する別の世界があるかもしれないという話。
内容はこれに近いかも。
パラレルワールドを扱ったドラマでいうと『FRINGE(フリンジ)』とかはかなり面白いです。
ドイツ語と英語
キャラクターそれぞれが異なる時代の自分たちと交差するこのドラマ。
そんなこともあって「あなたは誰?」というのはもう定番のセリフ。
Wer bist du? や Wer sind Sie?(Who are you?)、Was ist das?(What’s this?)などは各エピソード何度も登場するので完全に脳裏に刷り込まれました。
あとは個人的に使えそうだなと思ったものはここにメモしておきます。全部紹介すると多くなってしまうのでその一部を紹介。
- Bis später / See you later
- Vielleicht / Maybe, Perhaps
- Natürlich / Of course
- Ich denke schon / I guess so
- Keine Ahnung / No idea
- Wo willst du hin? / Where do you want to go?
- Ich weiß (es) nicht / I don’t know
- Keine Sorge / Don’t worry
- Wirklich? / Really?
- Hey, ist alles ok? / Hey, is everything okay?
実生活で使うことはないだろうけど頻繁に出てくるフレーズだと、
Der Anfang ist das Ende. Und das Ende ist der Anfang. Alles ist miteinander verbunden. Zukunft, Vergangenheit und Gegenwart.
(The beginning is the end. And the end is the beginning. Everything is connected. Future, past and present.)
とか。
エピソードによっては冒頭で偉人の言葉なんかも引用されたり。
Der Unterschied zwischen Vergangenheit, Gegenwart und Zukunft ist nur eine Illusion, wenn auch eine hartnäckige…
The distinction between past, present and future is only a stubbornly persistent illusion.
現在 過去 未来の区別は幻想に過ぎない
Albert Einstein(アルベルト・アインシュタイン)
この言葉はブライアングリーンも過去に番組『宇宙〜時空超越の旅〜』で引用していました。
Die Hölle ist leer, alle Teufel sind hier!
Hell is empty and all the devils are here!
William Shakespeare(ウィリアム・シェイクスピア)
『Dark』のなかでも「名前を持たない男」が引用していましたね。
Und wenn du lange in einen Abgrund blickst, blickt der Abgrund auch in dich hinein.
深淵をのぞく時、深淵もこちらをのぞいている
Friedrich Nietzsche(フリードリヒ・ニーチェ)
どきっとされられる言葉。ドラマではヨナスのことを指しているのかな。
Der Mensch kann zwar tun, was er will, aber er kann nicht wollen, was er will.
Man can do what he wills, but he cannot will what he wills.
Arthur Schopenhauer(アルトゥル・ショーペンハウアー)
これも考えさせられますね。自由意志とは。
物理学、そして神経科学の観点からみた自由意志は以前記事にしました。
感想
一番印象に残っているシーンを挙げるとするならば、ヨナスが父親の自殺を止めるために過去へと戻り、思い留めさせようと説得する場面でしょうか。
ここでまさかのどんでん返し。自分が説得しに行ったことがきっかけとなっていたなんて。
こういったドラマを見過ぎたせいか、結論が出る前に結果がわかってしまうことが多いんですが、これは気づけなかったですね。
あとは、先ほども述べましたがシリーズ通して言えることは本当に誰が誰だかわからなくなること。親子関係など誰と誰がどうつながっていて、みたいなことが混乱してきて大変でした。
特に訳がわからなくなるのがシャーロットとエリザベスの関係。
(確か)シーズン3でシャーロットはエリザベスの親でもあり、そして子供でもあるということが明らかとなります。
なんてこった。これって頭の中で整理しようとしてあーだこーだやっても中々簡単には理解できない。毎回わからなくなっては考えてを繰り返して処理に時間がかかりました。
最後に
昔と比べて最近の海外ドラマって中途半端なところで打ち切りになることが多いので、完結しているだけでもありがたいです。
各エピソードの時間は少し長いですが計3シーズンなのでさくっと見れるんじゃないかなと。
最後は今回のドラマのとあるシーンで出てきたセリフで締めます。
Was wir wissen, ist ein Tropfen. Was wir nicht wissen, ein Ozean.
(What we know is a drop. What we don’t know is an ocean.)