短編集3作目『The Return of Sherlock Holmes / シャーロック・ホームズの復活』【ロンドンのベーカー街へと再び舞い戻ったホームズ】

海外ドラマ『シャーロック(Sherlock)』を観たのは学生時代。

一話一話が映画並みの尺あるのでドラマと思って観るとけっこうしんどい時もあるのだけれど、内容自体はけっこう面白くて時間を見つけては観ていた。(アイリーン・アドラー役のララ・パルヴァーが美しすぎて思わず目を奪われた)

ところが、(たしかシーズン2終わりからシーズン3のはじめにかけてだったかな?)「亡くなったと思われたホームズが実は生きていた」という場面の強引さに萎えてしまい観るのをやめてしまった。(本を読んでいなかったので、まさかそれが元ネタからきているとは知る由もなかった)

当時はまだ若かったのでドラマ内で繰り広げられるイギリス英語がわからな過ぎて(アメリカ英語慣れしていた)、観ていてしんどかったというのも正直ある。

本書のシリーズを読み切ったら、あらためて観てみるのもそれはそれで面白いのかなと思う。

ということでさっそく本題。

The Return of Sherlock Holmes / シャーロック・ホームズの復活

  • The Adventure of the Empty House / 空屋の冒険
  • The Adventure of the Norwood Builder / ノーウッドの建築業者
  • The Adventure of the Dancing Men / 踊る人形
  • The Adventure of the Solitary Cyclist / ひとりきりの自転車乗り
  • The Adventure of the Priory School / プライアリー・スクール
  • The Adventure of Black Peter / ブラック・ピーター
  • The Adventure of Charles Augustus Milverton / 恐喝王ミルヴァートン
  • The Adventure of the Six Napoleons / 六つのナポレオン像
  • The Adventure of the Three Students / 三人の学生
  • The Adventure of the Golden Pince-Nez / 金縁の鼻眼鏡
  • The Adventure of the Missing Three-Quarter / スリークォーターの失踪
  • The Adventure of the Abbey Grange / アビー荘園
  • The Adventure of the Second Stain / 第二の血痕

以前にも触れてある通り、タイトルはその翻訳者によって若干異なるわけだが、ウィキペディアにのっているものと比較するとより正確に素直に訳されていることがわかる。

登場人物

1作目、2作目とブログで書いてきた際に、触れるタイミングがなかった人物らをここであらためておさらいしておきたい。

Mrs. Hudson(ハドスン夫人)

出典:FANDOM

ハドスン夫人はホームズが住むBaker Street 221Bの下宿の女主人。

Baker Street 221Bに客人が来た際にホームズらに知らせたり、ホームズらに料理を提供する場面でよく登場する。

本書のあるエピソードではホームズらが犯人を捕まえる際の手助けもしている。

Inspector Lestrade(レストレード警部)

出典:Wikipedia

ロンドン警視庁(スコットランドヤード)所属の警察官。

本書のとあるエピソードではsarcastic(サーカスティック)にホームズをいじる場面がある。

Inspector Hopkins(スタンリー・ホプキンズ警部)

出典:FANDOM

同じくロンドン警視庁(スコットランドヤード)所属の若手警察官。ホームズを慕っている。

これまでにもちょくちょく出てきたキャラクターだが、本書では特に登場回数が多い印象。

ホームズは生きていた!

本書での注目されるのはやはり「ホームズの復活劇」であろう。

約三年ぶりにその姿を表したホームズはまたベーカー街221Bにてワトスンと共に共同生活を送ることとなる。(ワトスンの妻はいつのまにか亡くなっていた)

ワトスンは医師の開業権を売り渡し、“ヴァーナーという若手の医師が、ケンジントンでの渡しのささやかな地盤を買い取ってくれることになった” らしい。

ところで、てっきり自分としてはパディントンで開業していて、ケンジントンはただの居住地だと思っていた。(どこかで読み落としているのかも)

本書を読んで

表情から「音楽家」と推理するホームズ

本書の個人的に好きな場面のひとつ。

ある一人の女性の手から「タイピスト」か「音楽家」かで迷うホームズだったが、“このかたの顔には、精神的な深みがある” といい、“あいにくタイピストにはこういう輝きはない。このお嬢さんは音楽家だ” と読み解くホームズ。この観察力はすごすぎる。

「ホームズ」と「コーヒー」

コーヒー愛飲家としてはホームズシリーズに度々登場するコーヒーを見逃すわけにはいかない。

本書でもホームズがワトスンにコーヒーを勧める場面がある。

“出発前に、ぼくがアルコールランプで淹れたコーヒーぐらいならごちそうするよ”

あまりコーヒーに詳しくない方はいまいちピンとこないと思うが、これは「Vacuum Pot(サイフォン)」のことを指していると思われる。

コーヒーサイフォンは、水の蒸気圧を利用してコーヒーを淹れるガラス製の器具である。日本では単にサイフォンとも呼ばれ、英語ではVacuum coffee maker, vac pot, syphon coffee makerなどと呼ばれる。19世紀のヨーロッパで発明されたものであり、日本では1925年(大正14年)に初めて島屋商会(現:珈琲サイフオン)から「コーヒーサイフォン」として販売された。

Wikipediaより引用

東京では喫茶店などでサイフォンでコーヒーを淹れている店もある。

ホームズ好きの方はこれでコーヒーを淹れて飲んでみるのも面白いかも。

コーヒーの淹れ方の種類に関してはこちらに書いてあります。

どうしてもホームズシリーズを終わらせたいアーサーコナンドイル

本書の最後のエピソードでは、ホームズはロンドン暮らしをやめ、サセックス州に隠遁していることが明らかとなる。

せっかく奇跡の復活劇を遂げたホームズであったが、このことから間接的に先生の「このシリーズはもう終わらせたい」という思いが読み取れる。

最後に

毎回このホームズシリーズには「解題」と「解説」がついていて、トリックについてや当時の時代背景(鉄道など)に絡めた話など盛りだくさんなので、本ブログではなるべくそういったすでに解説済みのものには避けつつ、書いていこうと思う。

ところで今回の『シャーロック・ホームズの復活』はロンドンを舞台とし、ロンドンの街を駆け巡る場面はほとんどなく、主にロンドン郊外や地方が舞台であることが多かったので、個人的にはもう少し「ロンドン」を感じたかったなと思った。

次の4作目『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』が楽しみである。