外国で8年暮らしている自分が思う海外生活の魅力

海外生活と聞くとキラキラしたもののように感じるしれないが、そうでないことはこれまでに何度か触れてきた。

何事においても良いこともあれば当然悪いこともある。

最近はネガティブな側面ばかりにフォーカスしていたので今回はポジティブな点に着目したい。

ちなみに自分はベルリンに住んでいるのでドイツ、もしくはヨーロッパに住む魅力という視点でまとめてみる。

ワークライフバランス

まず初めにワークライフバランスについて触れたい。

海外生活の魅力を語る上でいきなり仕事についての話をするというのはなんとも日本人らしいかもしれないが、仕事は人生の大きな一部を占めるものであり、とにかく働きまくる日本人にとってこれは重要なテーマだろう。

もちろん業界や職種、どのレイヤーにいるかによってその内容は全く異なってくるだろうからあくまでも主観的な体感というのはご承知の上で聞いてもらいたいのだが、海外で働く方が圧倒的に楽であると思う。

ざっくり自分の環境を紹介すると、週40時間働いていて基本は定時で帰れる。

もちろん残業をすることもあるがその働いた分は当然支払われるし、体調が悪ければ仕事を休むことも容易である。

有給は年間30日。これは取らなければならないものであり、有休消化率なんていう言葉はこのドイツには存在しない。

海外に来て最もギャップを感じる一つにはこっちの人たちの就労に対する考え方であった。

こっちの人にとって仕事はあくまで単なる仕事であり、重要なのはプライベートの時間をどのようにパートナーや家族と過ごすか、そして休暇はどの国へ旅行に行くか、そのことばかりを考えて日々過ごしている。(逆に言えばこの精神がヨーロッパ衰退の一つの要因と言えるかもしれない)

なのでマシンのように働く日本人とはかけ離れている。

例えば、こっちの人は体調が少しでも悪ければすぐに病欠する。

仕事はあくまでも仕事であって自分自身に重きがあり、そして権利がちゃんと保障されている。

「体調管理も自己責任」という鬼のような教訓が刷り込まれている自分からすると気合が足りないし貧弱すぎるのだがそういうのも許されるのがこの世界。

賛否あるだろうが多少の風邪程度では仕事に向かってしまうド根性魂が日本人の強さだと思う。

こういったぬるい世界でぬくぬく生きている身としてはサービス残業200時間や有休消化率(率ってなに)、退職代行などなどのキーワードには理解が追いつかない。

この程度の就労時間だと正直自由な時間というのはかなりあって週末はもちろんのこと、普通に平日でもかなりたくさんの時間を自分の好きなように過ごすことができる。

これは日本ではなかなか難しいことだろう。

以前にも書いたが欧米在住者がよく突っ込まれる話題として「でもその分物価も高いから生活大変なんでしょう?」というものがある。

何度も言うように人によって違うので一概には言えないが、仮に物価は高くてもその分給料も高いので問題はない。

しかもドルやユーロは強いので円から換算すると日本から見れば自然と高収入となる。物価の安い国へ旅行する時に困らないし、それは日本に一時帰国する際も例外ではない。

通貨の強い国で働くと必然的にもらえる額も増える。これは欧米に住む強みの一つかもしれない。

現地で暮らしているとその地での金銭感覚が当たり前になるのでよくわからなかったりするのだが、ドイツは結構物価が高いようだ。以前に「毎年ヨーロッパ観光に来るのよ」というオーストラリアからやってきた旅行者の方と知り合ったのだがドイツはオーストラリアの二倍くらいかかると言っていた。

ドイツはヨーロッパの中では経済的にも豊かな国なのでそういった意味ではドイツを移住先として決めるのも悪くないのかもしれない。

一つ、日本人が海外で働く上で挙げられる懸念点は言語の壁、そして文化の壁だろう。

「言語の壁」と聞くと単に語学力、例えばそれが英語圏の国ならば英語力の話かと思われるかもしれないが、そういう意味での話ではない。

英語が話せる、というのは大前提の話で、ここで述べた言語の壁というのはコミュニケーション能力の話である。

意外と触れられない点で皆英語力そのものばかりに注力しているのだが、むしろ英語力よりこのコミュニケーション能力の方が重要だと感じる。

もちろん人によるが、日本人は相対的にコミュニケーション能力が低い。

これは仕方のないことだと思う。

日本で受ける教育というのはディベートは少なく基本受け身であるし、社会に出ても自分の意見を言う機会というのはなく上から言われることに忠実に従うためやはり受け身の姿勢である。

しかし海外で働くとなると途端に立場関係なく自分の意見を主張することが求められる。

意見のないものというのは「周りに同意している」という意思表示にはならず、何も考えてないやつというレッテルが貼られてしまう。

つまり協調性や社交性の問題でこれは語学力でカバーできるものではなく、いくら英語が話せたとて引っ込み思案の人は苦労する。

はっきりいいえと自分の意思を伝えられることも大事。

なんでもはいはいと上の指示に従っていたらなんでも任されてしまい、ただ都合の良いようにこき使われてしまう。

ノーと言えない人はそれだけで疲弊してしまうだろう。

文化の壁も非常に大きい。日本人からしたら言語以上にギャップがあるかもしれない。

日本にずっといると当たり前であったことが実は当たり前ではなかったということはかなり多い。

日本的なノリでなんとなく伝えない気持ちを雰囲気で出して相手に察してもらう、みたいな文化はないのでこういった違いは最初苦労することだろう。

ドイツはローコンテクスト文化なのでどんなにあからさまなことでもちゃんと言葉でしっかりと伝えなければ相手には通じない。

結果的に海外で生き残っている人はハキハキとしていて我が強く、タフな人が多い。それはなんとなくイメージとしてわかってもらえると思う。

新しい価値観

ドイツに住んでいるからドイツ人の知り合いばっかりと思われがちだがそんなことは全くない。

これはベルリンに住んでいるということも大きいと思うが西欧の首都というのはどこも移民で溢れかえっている。

以前住んでいたロンドンもそうだし、ここベルリンも例外ではない。

日本人的にはなかなか想像しづらいかもしれないが、ロンドンに住んでいてもイギリス人と友達になるのは難しいしベルリンに住んでいてもドイツ人と友達になるのは意外と難しい。

大体は他の欧米人やアジア人とつるむことになる。

こういった人種の坩堝のような環境で過ごしているととにかくいろんな世界のことについての話題になる。

要するに日本人同士での会話では生まれないような様々な文化について語り合うことになるのだ。

また宗教や政治といった話題も普通である。

日本で宗教の話をしてくる人がいたらちょっと怪しいし、政治の話をしてくるのは選挙前、創価学会に属する人くらいであろう。

また、基本的に人はあなたのことを日本人として話すため日本のことについてよく聞かれることになる。

自分で情報収集するようになるので自然と日本、そして世界で何が起こっているのかに興味を持つようになる。

誰かの言葉を借りるなら、頭の中がグローバル化するのだ。

海外に住み始めるとより日本人としてのアイデンティティを感じることだろう。

また、外から見る日本という視点を持つことは面白い。

日本で見る世界地図というのは日本がど真ん中にあるが、海外で世界地図を見ると日本というのは極東に位置する。

日本のメディアでは海外では日本がとてももてはやされているかのような演出をよく目にするものの、日本人が思っているほど海外の人は日本に関心を持っていない。

もちろん、日本というブランドは存在していて日本人というだけで良い扱いを受けることはある。

日本のパスポートは世界一、というように日本はたくさんの国と国交を結んでおり、ここドイツでもビザは比較的取りやすい。

先人たちが残した功績に感謝しつつ、自分も日々良い日本人でいられるよう努めている。

広がる世界

ドイツに住む一番、いや唯一といってもいい魅力はたくさんの魅力的な国に囲まれていること。

美しいヨーロッパの国々を好きなだけ堪能することができる。

例えば、イタリアはミラノ。

ベルリンからならLCCで一時間で行けてしまう距離である。

そこから数時間電車に乗ればヴェネツィアにも行ける。

週末はイタリアで過ごす、なんていうのも決して特別なものではない、よくある過ごし方である。

チェコのプラハやオーストリアのウィーンであればバスでも行けるし、アフリカ大陸も近いので飛行機でエジプトやモロッコへ飛ぶのもあり。

北欧に行くのも楽しいし、ど定番にロンドンやパリに行くのも良いだろう。

ヨーロッパを楽しむ上ではドイツは最高のロケーションと言える。

本当に海外に行きたいなら行動を起こすのは今かもしれない

旅行や留学、移住含めもし海外に行きたいのならなるべく若いうちからの方が良いのかもしれない。

というのも、ある程度年齢を重ねてから生活環境を変えるというのはなかなかしんどいものである。

もしこれがアジア圏ならそんな必要はない。

文化的にも近く馴染みやすいし距離も近いので気軽に一時帰国もできるし心理的負担は少ないだろう。

しかし、こと欧米となると話は変わってくる。

アメリカに関しては旅行でしか滞在したことがないのでよくわからないが、少なくともヨーロッパに関していえば思った以上にワイルドなところである。

ものすごく極端に言ってしまえば、一度家から外を出たらその日自分の身に何か起きてもおかしくない世界である。

文化や価値観も全く異なる中でいきなりそういった環境に身を置き、しかもマイノリティとして生きていくのは若いうちだからできることだと思っていて歳を取ってから劇的な環境の変化に順応するのは大変なんじゃないかなと感じる。

しかし、仮に働くことが目的である場合はあまり若すぎるのもおすすめできない。

新卒一括採用というのは日本独特の文化で海外では基本的に数年間の実務経験が求められるので日本である程度社会人経験を積んでから行くのが理想的と言える。

もちろん巷では新卒で海外に行き現地就職した、という猛者もいるがこれは例外である。ちなみにこういった人は大体数年も経てばSNS上から消えている。その真相は定かではない。

というわけで今回は海外生活の魅力について色々とまとめてみた。

結局のところ、海外生活というのは合う人は合うし合わない人は合わないものである。

現状に不満を抱えていて何か変化を求めている人は「海外に出てみる」というのも選択肢の一つとしてあっても良いのかもしれない。