コーヒーの品種は現在品種改良や突然変異などによって200種類を超えるといわれており、その大元をたどると三つの原種があります。
それが「アラビカ種」「ロブスタ種」そして「リベリカ種」で、これらを『三大原種』といいます。
三つあるものの、飲まれているコーヒーのほとんどはアラビカ種、そしてロブスタ種の二種類なので、今回はこ二つを中心にお話しします。
Coffea arabica(アラビカ種)
エチオピアのアビシニア高原が原産のアラビカ種は世界で消費されるコーヒーの約60%以上を占めており、アフリカや中南米、アジアなど様々な国で栽培されています。
普段カフェなどで提供されるコーヒーはこのアラビカ種がほとんどで、よく見かけるBourbon(ブルボン)やCaturra(カトゥーラ)などはこれにあたりアラビカ種の品種となります。
栽培条件が厳格で病害虫にも弱く、一本の木からの収穫量も多くない
標高1000〜2000mの高地で適切な気候でなければならず栽培は困難を極めます。
また害虫や病気にも弱く、栽培が難しい品種です。
豆それぞれの個性によって異なり、豊かな酸味で奥深い味わい
アラビカ種の香りや味わいはもはや一言では言い表せません。こちらをご覧ください。
これはFlavor Wheel(フレーバーホイール)といってコーヒーの味覚を表現するのに使われます。
コーヒーの評価基準はいろいろあって「フレーバー」はそのうちのひとつに過ぎないんですが、とにかくアラビカ種のなかでも品種によって幅広い味わいがあることがわかります。
Coffea robusta(ロブスタ種)
正式名称はCoffea canephora(カネフォラ種)といいます。ロブスタ種という名前は実はブランド名で、正確にはカネフォラ種の変種のひとつです。
ロブスタは「強健な」という意味で、その特徴を表していてわかりやすいということから「カネフォラ種」ではなく「ロブスタ種」で名前が定着しました。
コンゴ盆地が原産のロブスタ種は世界で消費されるコーヒーの約30%を占めていて、主にベトナムやインドネシアなどで多く栽培されています。
病害虫にも強く育成が容易で大量生産が可能
標高1000m以下で気候に大きく左右されず、また害虫や病気にも強いです。
低コストで持続的な生産が可能なため、大手チェーンのブランドやインスタントコーヒーなどで使用されます。
苦味とコクが強く、ウッディで野性味あふれる味わい
スペシャルティコーヒーが盛んな現代ではロブスタ種の評価はあまり高くありません。(少なくてもイギリスでは)
苦味が強いため単体で飲まれることはあまりなく、基本的にはアラビカ種とブレンドされます。
またロブスタ種はカフェインの含有量がアラビカ種の約2倍あるのも特徴のひとつです。
ここまでの説明だとあまりイメージが良くないですが、当然そんなロブスタ種でもクオリティの高いものを作ることができます。
なかには「クオリティの高いロブスタ種はクオリティの低いアラビカ種に勝る」という人たちも一定数いて一概にロブスタ種すべてを否定することはできません。
現にエスプレッソ発祥のイタリアのコーヒー文化はこのロブスタ種によって支えられてきました。
アラビカ種とロブスタ種のブレンドの配合率はイタリアの地域やお店によって異なると思いますが、中にはロブスタ種が多くの割合を占めるエスプレッソを出す店もあるそうです。
またベトナムの「ベトナムコーヒー(氷が一杯に入ったグラスにコーヒーと練乳をいれたもの。コーヒーがとても濃いので氷を溶かしながら飲む)」もこのロブスタ種で作られています。蒸し暑いホーチミンの露店で飲むベトナムコーヒーは最高。
Coffea liberica(リベリカ種)
西アフリカのリベリカが原産のリベリカ種ですがあまり多くを語られることはありません。というのも世界のコーヒーの1%にしか満たず、ほとんど目にすることはないからです。
アラビカ種とロブスタ種は兄弟関係ではなかった?
評価の低いロブスタ種はもともとアラビカ種の”ugly sister”とされていました。
が、数年前の研究でそうではないことがわかりました。
この図はコーヒーの品種一覧です。これをみるとわかるんですが、実はアラビカ種とロブスタ種(カネフォラ種)は親子関係にあることが判明しました。
Coffea eugenioides(ユーゲニオイデス種)とロブスタ種との交配で生まれたのがアラビカ種だったんです。ということでロブスタ種はアラビカ種の親だったんですね。