みなさんは海外ドラマ『マインドハンター』をご覧になられましたか。
1970年代、アメリカでFBI行動科学課(Behavioral Science Unit、BSU)の特別捜査官たちがシリアルキラーを研究し、連続殺人鬼のプロファイリングに挑むクライムドラマです。
デヴィッド・フィンチャー好きなら皆見たことでしょう。
正直ハマりすぎて4〜5周は視聴しました。
海外ドラマ『FRINGE(フリンジ)』のファンとしてはオリビア・ダナム(本作ではウェンディ・カー役のアナ・トーヴ)と監視人(本作ではテッド・ガン役のマイケル・セルヴェリス)が共演していてテンション上がりました。
ちなみにアナ・トーヴはオーストラリア人。フリンジの頃にはすでにアメリカンアクセントを物にしており、最初アメリカ人だと思ってました。
あと、個人的にはドラマの音楽を担当したJason Hill(ジェイソン・ヒル)のサントラも好き。
Apple Musicでこのサントラを聴きながら本を読んでみたり。
ところでその原作というのがこちら。
『マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班』の著者であるジョン・ダグラスは犯罪者プロファイリングを体系化し確立させたチームの一人。
事件現場に残された証拠からその犯人の性格や特徴、人柄や生い立ちなどを導き出すというのは今でこそ当たり前のように感じますが、この時代はまだそういったものが確立されていませんでした。
それ以前の殺人というのは大抵が身内によるものでしたが、時代が経つにつれ、全くの赤の他人を殺害するものや無差別かつ動機が不明瞭なものも増えていき、犯罪はより複雑化していきます。
普通の人とシリアルキラーでは思考のプロセスが異なります。
どういった経緯で実行するに至ったのか。
つまり「彼ら」について知る必要性があったわけです。
“エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人事件』から一世紀以上、シャーロック・ホームズから半世紀たって、行動科学的プロファイリングは、文学作品のページから現実の世界へと移ることになった” と。
そこでジョンダグラスたちが行ったうちの一つが「連続殺人犯にインタビューする」というもの。彼らの犯行動機やその手口をまとめていきました。
本書でもストレッサーや秩序型、無秩序型という分類など、ドラマでお馴染みの用語も登場してきます。
シリアルキラーもお馴染みのThe Co-ed Killerことエド・ケンパー、BTK(Bind、Torture、Kill(縛って、拷問して、殺す))ことデニス・レイダー、リチャードスペック、Son of Sam(サムの息子)ことデビッド・バーコウィッツ、チャールズ・マンソンなどなど。
ドラマではまだですが、有名どころでいうとテッド・バンディなんかも出てきたり。
とにかくたくさんの殺人者が登場するんですが、本書の見どころの一つとしてはやはり彼ら一人一人をカテゴライズしていく箇所でしょうか。
生い立ちについて、どんな家庭環境で育ったのか。父親というロールモデルの不在や支配的な母親の存在によって生まれる歪みなど。
殺害一つをとっても、どのように襲ったかでその特徴があぶり出されます。
例えば、後ろから突然の不意打ちで襲った場合。
それは自分に自信がなく、社会的適応性に乏しく、対人関係において問題があると。
このようにしてその人の年齢や学歴、職業(ホワイトカラーかもしくはブルーカラーか)、過去に犯罪歴があるかどうか、乗っている車などを見抜いていくわけですが。
なかでも衝撃的だったのはローレンス・ビッテイカーとロイ・ノリス、トマス・ヴァンダ、リチャード・チェイスとか。
何をしたのか、についてはここではその詳細は控えますが、本当に信じ難いというか想像を絶するというのはまさにこのことだなと。
多い時は実に百件以上、同時期に事件を抱えていたというジョン・ダグラスですが(さすが犯罪大国アメリカ)、一体どんな人物なのでしょうか。
ドラマや文章だけではわからないこともあります。
気になったのでYoutubeで検索してみることに。
冒頭をご覧いただければお分かりの通り、多少のアレンジはありつつも基本的に劇中に登場する人物にはモデルがいます。(ホールデン・フォードがジョン・ダグラス、ビル・テンチがロバート・レスラー、ウェンディ・カーがアン・バージェス、といった感じ)
後から気づいたんですがこの動画は日本語字幕もつけられるのでおすすめ。(誤訳多いけど)
基本的にドラマ、本と重複している内容が多いですが、面白いです。
また、エド・ケンパーが実際に話している映像も出てきたり。IQ145の持ち主だったという彼の語り口からは知的さがうかがえます。
というわけで今回読んだ『マインドハンター』ですが、なかなか興味深かったです。
本書ではエドガー・アラン・ポーやコナン・ドイル、ウィルキー・コリンズといった推理作家についての言及もいくつかあり、シャーロックホームズは全巻読んだわけですが、これを機に有名な推理小説を読んでみるのも面白いかもなと感じました。
最後に紹介するのはイギリスのロックバンド、Roxy Music(ロキシー・ミュージック)の曲『In Every Dream Home A Heartache』。
劇中のとある場面で使われていました。Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)の曲『In the Light』などもそうですが、本当に選曲が秀逸といいますか。こんなに雰囲気がぴったりな曲はないでしょう。