Audibleの朗読で19世紀末英国ロンドンの世界へ【英語でシャーロックホームズ】

短編集2作目『The Memoirs of Sherlock Holmes / 回想のシャーロック・ホームズ』【ホームズが探偵になったきっかけ / 兄マイクロフトやモリアーティ教授の登場】

そういえばこないだ、ベネディクトカンバーバッチが読み上げるシャーロックホームズのAudiobookがあることを知った。

寝るときは大体なにかしらのポッドキャストを聞きながら寝ることが多いのだが、試しにその夜はそのAudiobookを聞いてみることにした。

というのも今はこうして日本語を介してホームズを愉しんでいるわけで、原文を、しかもドラマ『Sherlock』でホームズ役を務めるカンバーバッチによる朗読には非常に興味が湧いた。

ストーリーは「鉄道にまつわる話」。(具体的になんというタイトルだったかなどはちゃんと確認していない。)

このタイトルをしっかり確認せずに聴いた、というのはようするにこうして今ホームズを読み進めていっているなかで、いずれ出会う話なのでネタバレしたくなかったという理由からである。

じゃあなぜネタバレしたくないのに聞いたかというと正直内容を理解できる自信がなかったから。というのも当方はイギリス英語がそこまで得意ではない。笑

それに加えて日本語でホームズを読み進めていく中で、その「元の原文の難解さや独特な言い回しが多いこと」を常日頃感じていたのでどうせ聞いても内容はわからないだろうと思っていた。

ところがどっこい、普通に聞き取れてしまい事件の内容から犯人の正体、そしてその手口までわかってしまった。

けっこうこれは自分的には衝撃的な出来事であり、ちゃんと聞き取れたことの嬉しさでその夜はなかなか寝付けなかった。笑

イギリスにきた当初にブログで「アメリカ英語に慣れているのでイギリス英語には苦手意識がある」というのを書いたのだが、どうやらロンドンで生活するうえで耳が慣れてしまったのかもしれない。

これを機に、それまでなかなか手をつけてこなかったイギリス映画やドラマもいくつか視聴してみたのだが、普通に聞き取れるし内容を理解できるようになっていることに気づいた。(それでも未だに全然聞き取れないものもある。イギリスにはいろんなアクセントがあるのでそこが問題なのかも)

というわけで前置きが長くなってしまったが、2作目となる本書『回想のシャーロック・ホームズ』を読みおえたので、いろいろとまとめてみたい。

The Memoirs of Sherlock Holmes / 回想のシャーロック・ホームズ

  • Silver Blaze /〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪
  • The Yellow Face / 黄色い顔
  • The Stockbroker’s Clerk / 株式仲買店員
  • The Gloria Scott /〈グロリア・スコット〉号の悲劇
  • The Musgrave Ritual / マスグレーヴ家の儀式書
  • The Reigate Squire / ライゲートの大地主
  • The Crooked Man / 背の曲がった男
  • The Resident Patient / 寄留患者
  • The Greek Interpreter / ギリシア語通訳
  • The Naval Treaty / 海軍条約事件
  • The Final Problem / 最後の事件

補足として、ウィキペディアによるとこれらに加えて「The Cardboard Box / ボール箱」という話が収録されているが、現在では4作目の『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録されている。

また話のタイトルは翻訳している著者によって若干異なるのでその点もご留意いただきたい。

登場人物

本書で注目すべきなのはやはりマイクロフトやモリアーティ教授の登場だろうか。ホームズシリーズを読んだことがなくても知っているくらい有名な二人である。

Mycroft Holmes(マイクロフト・ホームズ)

出典:Wikipedia

シャーロックの兄であり、七つ年上のマイクロフト・ホームズは政府のとある部局にて会計監査の仕事をしている。

シャーロックはベーカーストリート、ワトスンはケンジントンに住んでいることは前回お話したが、マイクロフトはペルメルに住む。

ペル・メル(英: Pall Mall)はロンドン中心部、シティ・オブ・ウェストミンスターのセント・ジェームズ地区にある通りである。通りはセント・ジェームズ・ストリートとトラファルガー広場を繋いでおり、通りの名前は17世紀に地区で行われていた球技、ペルメルに由来するものである。地区はチャールズ2世施政下に建てられ、ロンドンの高級住宅街となった。18世紀には上流階級の買い物、また19世紀には紳士クラブ(英語版)で知られるようになった。21世紀でも現存するクラブとしては、リフォーム・クラブ、アシーニアム・クラブ、トラヴェラーズ・クラブなどが挙げられる。

Wikipediaより引用

トラファルガースクエアには大体みんな行くので、これまでペルメルを聞いたことがなかった人でも知らずのうちに訪れたことのある人は多いんじゃないかと思う。

ウィキペディアにもあるようにこのあたりには紳士クラブがあるのだが、本書で登場するマイクロフトが会員であるというDiogenes Club(ディオゲネス・クラブ)は架空のもの。

Professor Moriarty(モリアーティ教授)

出典:Wikipedia

一応本名はジェームズ・モリアーティなのだが、英語版ウィキペディアではProfessor Moriartyが一番最初に来ていたのでこちらでもそうすることにする。

生まれながらにして数学の天才であり元大学の数学教授であったが、一方で裏ではロンドンを牛耳る犯罪者である。

ホームズはモリアーティ教授のことを”Napoleon of crime”(犯罪界のナポレオン)と称する。

ちなみに本書でのモリアーティ教授の登場は非常にあっさりしている。というのも元々ドイルはここまでシリーズとしてホームズを書き続ける気はなかったらしい。(この辺の話はぜひ本書にて)

ホームズが探偵業を始めるきっかけとなった人物

本書にはホームズが探偵を生業とするきっかけとなった事件の話も収録されている。そしてそのきっかけとなった人物がホームズの大学時代の友人ヴィクター・トレヴァーの父親である。(特に大学名は書かれていない。シャーロキアンのあいだではオックスフォード大か、はたまたケンブリッジ大かという論争があるらしい)

いつもの調子でその容姿などから、鋭い観察眼によってトレヴァー氏のこれまでの来歴や人となりを的中させたホームズ。

その能力に感心したトレヴァー氏はホームズを称賛し、そこでホームズは「これまで道楽でしかなかったこのものを職業にできるかもしれない」と考える。

こうしてホームズは探偵としての一歩を踏み出していったわけである。

ところで本書では、こうしたホームズが探偵業を始めるきっかけとなった話に加え、彼自身の身の回りの事柄についても少しばかり語られている。

そのひとつは彼の家系について、ホームズの祖母はフランスの画家オラース・ヴェルネの妹であったということが発覚する。

Horace Vernet(オラース・ヴェルネ)
出典:Wikipedia

またホームズはロンドンに出てきた頃、Montague Street(モンタギュー街)に下宿していたらしい。(生粋のロンドナーだと勝手に思ってた)

本書を読んでの感想

イギリス、ロンドンのこと満載

前回も触れたがやはりロンドンに住んでいる、もしくは住んでいたことのある人には大変面白い小説である。

ある話ではホームズらはハイドパークに散歩に行ったり、ハムステッドに下宿している依頼人が来たり、イブニング・スタンダード(新聞)の見出しを読む場面が出てきたり(ちなみに前回の記事のアイキャッチにうつっているのはイブニングスタンダードです)とロンドン住みにはたまらない内容となっている。

また、とある依頼人の話で「あるルート」が登場する。

それはペルメルからケンジントンに向かう際の出来事。

ペルメルを出発→チャリング・クロス→シャフツベリー・アベニュー→オックスフォード・ストリートと進んでいくのだが、ここで依頼人は遠回りではないかということに気づくという場面。

ロンドンの地理がわかるとこれはどう考えてもおかしいことがわかる。遠回りというよりかはむしろただ遠ざかっているだけで、明らかに別の場所に連れていかれている。笑

こういった点がわかるので読んでいて非常に面白い。

一作目を読んでいる方なら当然ご存知のことだが、もちろんホームズ一向はロンドンに留まっているわけではなく、時にはロンドン郊外や地方都市、また国外にも遠征に行く。

知っている土地が出てくればテンションが上がるし、知らない土地が出てくれば勉強になるしヨーロッパだと格安で行けるので「訪れてみたい」とつい思わされてしまうのである。

日本語で読んでいるがゆえにそれがヒントとなる場合がある

今回ホームズを読んでいて思ったのがこれ。

とある話で「あるメッセージ」が登場するのだが、日本語訳のメッセージと共に原文も紹介される場面がある。

しかしそもそも訳があるわけで原文を紹介する必要はないのだから、わざわざ英文でも書かれるということはその文章の内容はミスディレクションであり、英単語の並び自体にヒントが隠されているということは一目瞭然である。

違う言語で読むということでこういった「より情報が絞られる」というのはなかなか面白いなと感じた。意味合いは全く異なるが、本書ではこういった他言語を使った話なんかも収録されている。(この話も好き)

最後に

というわけで今回の『回想のシャーロック・ホームズ』もなかなか面白かった。

ホームズが発する「合点承知」や「重畳!」という言葉は原文ではなんと言っているのだろうか、気になるところである。