Audibleの朗読で19世紀末英国ロンドンの世界へ【英語でシャーロックホームズ】

長編2作目『The Sign of Four / 四人の署名』

Kindleで読んでいるせいで”本としての厚さ”というものを実感することはないのだけれど、総ページ数を見る限り短編集にくらべて長編はどうやら薄いみたい。

なのでサクサク読めてしまう。(『緋色の研究』も『四人の署名』も一日で読みきってしまった)

残すはあと二作品。

達成感もあるが、終わってしまうのは残念な気持ちも正直ある。

まさかこんなにはまるとは思っていなかった。

The Sign of Four / 四人の署名

舞台として登場するのはUpper Norwood(アッパーノーウッド)やCamberwell(キャンバーウェル)など。(どちらもサウスロンドンなどで正直馴染みはない)

本書の目玉といえばやはり「テムズ川でのボートチェイス」だろうか。

これまでにはない(といっても自分が読む順番間違えただけなんだけど)規模のこういったアクションシーンは新鮮で面白かった。

こちらがそのルート。

左のベッグベンあたりからホームズらは進み、ロンドン塔付近で待ち伏せをする。(わかりづらいがこの地図でいうと緑のピン「ザ・シャード」らへん)

“シティーを過ぎるころには、西日の最後の残光が、セントポール大聖堂のてっぺんの十字架を黄金色に染めていたが、ロンドン塔に到着したときには、すでに黄昏が色濃く迫ってきていた。”

そこからオーロラ号を追い、あとはこの線の示すとおり。

“私はこれまでの変化に富んだ半生において、さまざまな土地で、さまざまな動物を追ってきた経験を持つが、その私にしても、ほかならぬ地元のテムズ河を、こうして文字どおり飛ぶような速度で、憑かれたごとくに走りくだったこのときの人間狩りほど、荒々しい興奮を味わわされたためしはない。”

また、ワトスンののちの妻となるメアリー・モースタンとの出会いも描かれている。

本書を読んで

ホームズシリーズで学ぶ画家

“芸術のパトロン”と自称し、近代フランス派を好むというサディアス・ショルトーがコレクションとして所有する絵画。その絵画を生み出した画家を紹介する場面があったのでここで簡単にまとめる。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー

出典:Wikipedia

ジャン=バティスト・カミーユ・コローはフランスのバルビゾン派に属する風景画家。彼の絵画はルーヴル美術館で見たかな。

サルヴァトル・ローザ

出典:Wikipedia

サルヴァトル・ローザはイタリア、ナポリ出身の画家、詩人。劇的な山景や海景を主題とした作品を得意とした。彼の絵画はナショナルギャラリーで見たかな。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー

出典:Wikipedia

ウィリアム・アドルフ・ブグローはフランスの画家で、アカデミズムの画風を持ち、神話や天使、少女を題材とした絵画を多く残した。

ホームズの引用

あと本書で気になるものといえば、ホームズが度々会話の中で引用する台詞。

これまでにもホームズシリーズでいくつかあったと思うが、今回は特に多かったイメージ。中には書籍からの引用などもあり、「タイトルこそ一度は耳にしたことはあるが、実際にはちゃんと読んだことがない」というものも多い。

ここでその一部を簡単に紹介。

ホームズがワトスンに勧めた本 「ウィンウッド・リードの『人類の受難』」

“さてと、ぼくはちょっと出かけてくる。二、三あたってみたい点があるんでね。きみにはこの本を推薦させてもらうよ。かつて書かれたもっとも注目すべき著作のひとつだ。ウィンウッド・リードの『人類の受難』。じゃあぼくは一時間ほどで帰るから”

ホームズからこう勧められたワトスンはこの本を読み始めるも、目先の事件とメアリー・モースタンのことで頭一杯であり集中して読むことができなかったのだが。

本書ではこの後この『人類の受難』から引用する場面がある。

「かのウィンウッド・リードが、その点ではうまいことを言ってる」と、ホームズ。「”ここの人間が解きがたい謎であるのにひきかえ、集団としての人間は、一個の数学的確率となる”ってね。」

ウィンウッド・リードは英国の作家、旅行家でこの『人類の受難』とされる書籍は当時の人気作らしいのだが、日本語訳ではないみたい。(というか彼の書籍はどれも訳されてない)

原題は『The Martyrdom Of Man』。

古い本だし訳書が出ていないところから察するに、おそらく日本人でこの本を読んだことのある方は限りなくゼロに等しいだろう。

レビューを見る限り、かなりの良書のようである。なかには”Sherlock recommended it to Watson“と、ホームズきっかけでこの本を読んだ人もいるみたい。

彼がいうには元イギリスの首相ウィンストンチャーチルのお気に入りの本だったらしい。

これ以外にも本書ではラ・ロシュフコーの『箴言と考察』からの引用とされるもの、ゲーテの『ファウスト』〈第一部〉からの引用などがある。

「たまにちらっと頭の隅に、知性の光がさすこともあるんだ。”ばかのくせに小才の利くやつほど困ったものはない”ってね。」

「”自分の理解できぬものをばかにして笑うのは人間のつねである”ってね。さすがのゲーテはうがったことを言うよ」

最後に

アルファベットの書き方から「その人の人となり」を見極めるというシーンこそあったものの、今回は特にこれといって「英語」について触れるような場面はなかった。

強いていえばこの『四人の署名』というタイトルだろうか。ウィキペディアをご覧になってもらえばわかる通り、こちらでは『四つの署名』となっている。

“The sign of the four”ではなく、”The sign of four”であるというこの事実に日本ではどう訳すかが議論されてきた。

この辺の話は本書に書かれているので触れないが、個人的にはタイトルのかっこよさだけでいうと絶対に『四人の署名』だと思う。

冒頭の登場人物紹介のページでのっている四人の”署名者”の名を見たときはドキドキさせられた。