ホームズを読み進めていくうえで毎回思わされるのは「聖地巡礼したい」ということ。
ロンドンならまぁいつでもいけるわけだが、それが地方となるとなかなかそうもいかないわけで。(特に今は)
本書で知ったのだが、収録作の中でも舞台として登場する「ポーツマス」。
ポーツマスと聞いたら最初に思い浮かぶのは「ポーツマス条約」だが、ここはドイルが住んでいた場所でもある。
ドイルはこのポーツマスに8年間住んでいて、ホームズの最初の2作品はこの地で書き上げたそう。当初は金銭的にも厳しい生活を強いられていたわけだが、ホームズ作品により大成功を収めることとなる。
ポーツマス自体には特に惹かれていなかったのだが、そんなドイルの下積み時代のような(勝手なイメージでそう書いてるけど)話を知ってしまうと少しばかり興味を持ってしまうわけである。
その距離約2時間。ロンドンから列車に乗ってポーツマスへと足を運んでみるのもいいかもしれない。
His Last Bow / シャーロック・ホームズ最後の挨拶
- The Adventure of Wisteria Lodge / 〈ウィスタリア荘〉
- The Adventure of the Cardboard Box / ボール箱
- The Adventure of the Red Circle / 赤い輪
- The Adventure of the Bruce-Partington Plans / ブルース=パーティントン設計書
- The Adventure of the Dying Detective / 瀕死の探偵
- The Disappearance of Lady Frances Carfax / レイディー・フランシス・カーファックス姫の失踪
- The Adventure of the Devil’s Foot / 悪魔の足
- His Last Bow / シャーロック・ホームズ最後の挨拶ーホームズ物語の終章
本書では久しぶりのホームズの兄であるマイクロフトが登場する。
収録作の多くはリアルタイムというよりも過去に起こった事件をワトスンが語るといったものが多かったが、一応時代的には第一次世界大戦の頃。
なので最後に収録されている「His Last Bow / シャーロック・ホームズ最後の挨拶ーホームズ物語の終章」では戦争が始まる前の緊張を感じさせる描写や、自動車の登場など当時の時代背景が反映されており、これまでのホームズ作品とは違った少し時代の経過を感じさせられるような作品となっている。
本書を読んで
いくつか出てきたロンドンの地
前作は地方が舞台となっている収録作が多かったのだが、本書ではロンドンの地が舞台となった収録作がいくつかあったのでホームズの世界観をより身近に感じることができけっこう楽しめた。
そのひとつとして登場したのがCroydon(クロイドン)。
クロイドン (Croydon) は、ロンドン南部のクロイドン区にあるタウン、地区。「クロイドン」の地名は、古英語で「野生サフランの咲く谷」を意味する。元はサリー州に属していたが、1965年に周辺の町村と合併してクロイドン区となり、グレーター・ロンドン(大ロンドン)に編入された。2017年に公開された映画『パーティで女の子に話しかけるには』の舞台となった。
wikipediaより引用
実はクロイドンには元々「訪れたい」という思いがあった。クロイドン自体は特別なにかあるような地ではなく、わざわざピンポイントで目指すような場所ではないのだが、それでもなぜ訪れたいと思っているかというとそれはイギリスのドラマ『Peep Show(ピープ・ショー ボクたち妄想族)』の舞台となっているからである。
渡英前にイギリス英語に慣れようと見始めたこのドラマは非常に面白く、メインキャストの二人がクロイドンにあるフラット(実際にその建物がある)に住んでいるという設定なのでいつかは訪れようとは思っていたのだが、このウィキペディアに“元はサリー州に属していたが”と書かれているようにけっこう遠いのである。
電車で行っても一時間かもしくはそれ以上かかるし(意外とロンドンは広い)、そもそもサウスに用があることも滅多にないので未だに行けてないのだが、そのうちタイミングを見て訪れようと思っている。
そしてあともうひとつ、登場したのがAldgate(オルドゲート、本書ではオールドゲートと書かれている)。
オルドゲートはロンドン市の選挙区でロンドン市とタワーハムレットのロンドン特別区の両方に広がる東ロンドンのより広い地域。オルドゲートは、市の周りにある古代のロンドンの壁にある門にちなんで名付けられたらしい。
オルドゲートが舞台となる話では「Metropolitan line / 地下鉄メトロポリタン線(住んでるエリア的にあまり使ったことがないが、それでも何回か利用したことがある)」や、ロンドン北西に位置する「Willesden / ウィルズデン(確かこの辺でNIナンバー申請した気がする)」、ロンドンブリッジ、グロスター・ロード駅などロンドン感満載でたまらない。
ちなみに、みんな知っているRiver Thames(テムズ川)を結ぶ橋、多くの人はあの立派な橋を「ロンドンブリッジ」と勘違いするのだが、実はあれは「タワーブリッジ」である。(ロンドンブリッジはなんの変哲もない地味な橋)
英語
本書のある話ではホームズがアメリカ人に扮し、アメリカ英語を話すという場面が登場する。
そこでのドイツ人との英語でのやりとりが面白い。
ホームズ “ゼニのことはどうなるんで?”
ドイツ人 “ゼ、、、なんだって?”
ホームズ “カネですよ。報酬のことです。”
イギリスで暮らしているためアメリカ英語に慣れていないこのドイツ人。日本語で読んでいるのでわからないのだが、原文ではどう書かれているのだろうか。
Moneyは他にもたくさんの言い方がある。
アメリカで有名なところだとbuck, bucks(バック、バックス)だろうか。イギリスだとquid(クィッド)と言ったりする。
他にもホームズはこんな台詞を吐いている。
“そうすれば、もうこんな、アメリカ人に化けるなんていう曲芸(スタント)ーいや、失礼、どうもぼくの語彙の源泉は永久に汚染されてしまったらしい”
また最後の「解説」ではホームズのファンクラブにも所属されている方のホームズに対するアツい思いが綴られている。(ビートルズとホームズのファンに似たようなものを感じるのは自分だけだろうか)
その方の所属されている団体の方々はホームズシリーズからある文章を引用してそこからそれが何の話かやその前後の文章が答えられるらしい。(日本人で英語の文章まで暗記してるってもはやこわい)
最後に
最後に収録されている「His Last Bow / シャーロック・ホームズ最後の挨拶ーホームズ物語の終章」にて物語の終盤、ホームズの “ひょっとすると、きみと静かに語りあえるのも、これが最後にならないともかぎらない” という一言には衝撃を受ける。
タイトルにつけられている「最後の挨拶」からも想像はつくのだが、しかしこれほど毎回毎回シリーズの終わりを匂わせるようなストーリー展開になったり、台詞が登場するものは他にないだろう。
ここからある一つのシリーズが人気になってしまい、己のやりたい事と世間が求める事とのずれに作者が悩まされている思いが伝わってくるのである。